Really Simple Licensing (RSL) 1.0 · 日本語リファレンス

AI に「使ってよい条件」を、機械可読で伝える

RSL 1.0 は、Webページ・画像・データセットに対して「AI がどう使ってよいか」「使うならいくら払うか」を 機械可読で宣言する標準です。仕様本文は rslstandard.org/rsl で公開されており、RSL Internet Collective が策定・維持しています(本ページは「業界標準として確定した」日付を出典つきで示せないため、断定しません)。

このページは RSL 1.0 仕様日本語リファレンスです。 公式の翻訳ではありません。規範的な条文は必ず原典を参照してください。

なぜ robots.txt では足りないのか

robots.txt が答えられるのは「クロールしてよいか」だけです。 生成AIの時代に権利者が伝えたいのはその先にあります。

RSL はこれらを XML で表現し、robots.txt から指し示します。 「拒否か許可か」の二択ではなく、条件付きの許可を書けるのが本質です。

最小の例

robots.txt に1行足して、ライセンス条件の在り処を示します。

License: https://example.com/license.xml

User-agent: *
Allow: /

指し示された先が RSL 文書です。

<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<rsl xmlns="https://rslstandard.org/rsl" max-age="30">
  <content url="/">
    <license>
      <permits type="usage">search</permits>      <!-- 検索はよい -->
      <prohibits type="usage">ai-train</prohibits>  <!-- 学習は拒否 -->
      <payment type="attribution"/>                <!-- 出典表示が対価 -->
    </license>
    <copyright type="organization">Example Inc.</copyright>
  </content>
</rsl>

語彙 — 用途(usage)

<permits type="usage"><prohibits type="usage"> に書けるトークンです。

トークン日本語意味
allすべての自動処理あらゆる自動処理
ai-allAIによる全用途学習・推論・索引・検索・生成・グラウンディング・モデル評価を含む、AIシステムによるあらゆる利用
ai-trainモデル学習モデルの学習またはファインチューニング
ai-inputAI回答の入力RAG・グラウンディング・AI回答の根拠としての利用
ai-index内部索引内部インデックスや検索用データベースへの取り込み
search検索検索インデックスと検索結果への表示(AI要約は含まない)

語彙 — 利用者(user)

トークン日本語
commercial商用利用一般
non-commercial非商用
education教育機関
government公的機関
personal個人利用に限る

地域制限は type="geo" に ISO 3166-1 alpha-2(JP US EU 等)を書きます。

語彙 — 対価(payment)

日本語意味
free無償対価を求めない
attribution出典表示目に見えるクレジットと機能するリンクを要求
contribution貢献金銭または現物による誠意ある支援
purchase買い切り一回限りの支払い
subscription継続課金アクセスの定期課金
crawlクロール従量クロール1件ごと
training学習従量学習イベント1件ごと
use生成従量推論・生成1件ごと(per inference / generation use)

<standard> は共通の枠組み(Creative Commons の URL 等)を、 <custom> は発行者独自のライセンスページを指します。いずれも照合用の不透明な識別子として働きます。 金額は <amount currency="USD"> で表します。

報告(reporting)と法的宣言(legal)

<reporting> は利用実績の報告先と方式を指定します。型は telemetry(送信データ)/provenance(来歴)/audit(監査)。 指定された方式で報告しない利用は無許諾として扱われます

<reporting type="audit"
           profile="https://example.org/profiles/…"
           endpoint="https://reports.example.com/telemetry"/>

<legal> は権利者側の宣言です。

日本語書ける値の例
warranty保証ownership authority no-infringement privacy-consent no-malware
disclaimer免責as-is no-warranty no-liability no-indemnity
attestation表明の真正性true
contact連絡先URL
proof証明の参照先URL(証明書・トランザクション等)

配信のしかた(4通り)

  1. robots.txtLicense: https://example.com/license.xml
  2. HTTP ヘッダLink: <…>; rel="license"; type="application/rsl+xml"。HTML 以外(画像・JSON・データセット)にも効く
  3. HTML<link rel="license" type="application/rsl+xml" href="…">、または <script type="application/rsl+xml"> で埋め込み
  4. RSS / メディアファイル埋め込み — 名前空間つきの rsl: 要素として

RSL 文書のメディアタイプは application/rsl+xml、名前空間は https://rslstandard.org/rsl です。

License Server(OLP)

<content server="https://api.example.com"> を書くと、クライアントは Open License Protocol でライセンストークンを取得してからコンテンツにアクセスします。

エンドポイント用途
POST /tokenライセンストークンの取得(client_credentials)
POST /introspectトークンと対象リソースの検証
POST /key暗号化アセットの復号鍵の取得
Authorization: License rsl_cnNsLWNsaWVudC0xMjM6…

条件を満たさない場合、サーバは 401 Unauthorized または 402 Payment Required を返します。

注意: server を書くと、無償ライセンスでもトークン取得が必須になります。 「ただ読ませたいだけ」のページに付けると、善意のクローラまで弾かれます。

守るべき規則

拡張に関する規定は 2026-08-09 の仕様更新で明文化されました(変更履歴)。

他の標準との関係

標準状態役割の違い
RSL 1.0仕様公開中(rslstandard.org/rsl・errata あり) 許諾条件+支払いを機械可読に表現。本ページの対象
Cloudflare
Content Signals
稼働中(2025-09〜) robots.txt に search / ai-input / ai-train の可否を書く。意思表示のみで対価は扱わない
IETF AIPREF策定中 Content-Usage ヘッダを標準化する取り組み。RFC 未発行
C2PA実装が普及 ファイルの中に来歴を埋め込む。RSL はファイルの外で条件を宣言する。補完関係

RSL の payment type="contribution"(貢献ベースのライセンス)は、 Creative Commons の CC Signals ——AI 時代のコモンズにおける相互性を支えるための取り組み——を出自としています。RSL 1.0 はその最初の実装です。

仕様の変更履歴

RSL 1.0 の公式の errata と変更履歴rslstandard.org/rsl/errata で公開されています (仕様本文の冒頭メタデータに Status / Published / Previous Version と Errata の所在が明記されています)。 変更の一次情報はそちらを参照してください。

訂正(2026-08-31): 本ページは以前「RSL は公開された変更履歴を持たない」と記載していましたが、誤りでした。 2026-08-11 に /changelog 等の URL が 404 であることだけを見て結論したもので、公式 errata の存在を見落としていました。

cert.aicu.ai はこれに加えて、仕様本文を週次で自動監視し、検知した差分と自らの実装への影響の評価を記録しています。 公式 errata の代替ではなく、実装者の立場での評価記録です。

RSL 1.0 仕様差分の評価記録(cert.aicu.ai・非公式)→

参考: この文書の発行者による実装例

本リファレンスを公開している cert.aicu.ai は RSL を実装しています。 仕様の理解には不要ですが、動いている実例として参照できます。

  • /robots.txtLicense: ディレクティブと Content Signals の併記
  • /license.xml — サイト全体の RSL 文書
  • /licenses/GC/1.0payment type="use"<custom> が指す独自ライセンス定義の例
  • /v/{certId}legal type="proof" が指す証明書